みどりをちらっと見ると、ペットボトルを両手で持ち、いまだに目を白黒させている。


「あー……、違う、だから……そういうことじゃなくて」

「……あっはは! 大丈夫大丈夫、分かっとるから」


そう言うわりに、言葉と表情が一致していない。動揺しているのが丸分かりだ。


「飲まんから安心してー」


みどりは頬にペットボトルを当てながら、ぎこちなく笑った。

俺は何となく気まずくて、顔を背けて意味もなく田んぼを眺める。


せっかくペットボトルで暑さが和らいだのに、顔が赤くなるのを自分でも感じた。

変にそわそわして、落ち着かない空気が流れていることも気のせいではないだろう。


これだから、困る。


男子とか女子とか考えずに、ただ笑っていられたら楽なのに。



生温い風が、みどりと俺の間を通っていった。













「へえ、歩いて帰ってきたんかー」


午後三時。

半袖Tシャツに着替えた俺は、達郎の自転車の荷台に乗っていた。

麦わら帽子を被ったみどりは、由香の自転車の荷台に乗っている。


「パンクとかまじで有り得なかった」

「災難やったなあ」