「……あ」
考えを巡らせていたとき、ふと視界に入ったのは、自転車のハンドルに引っ掛けてあるヘルメット。
「みどり」
「はいー」
「ヘルメット取って」
「……ヘルメット?」
怪訝そうな顔をしつつも、みどりは引っ掛けてあったヘルメットを取り、渡してくれた。
俺はそれを受け取って左手に持ち、右手にペットボトルを持つ。
そして、太鼓のようにヘルメットをペットボトルで叩いた。
「ぎゃー! 何やっとんの!」
「だから、氷割ってるって言ってるだろ」
「ええー……、それどうなんよ……」
さすがヘルメット。頭を守るものなだけあって、しっかり固くて丈夫だ。
数回ペットボトルを叩いたら、凍らせた麦茶は砕けていた。
「おー……!」
「ん」
用無しになったヘルメットをみどりに渡して、再び引っ掛けてもらう。
ヘルメットで氷を割る俺を、批判的な目で見ていたくせに、単純なみどりは感嘆の声を上げた。
それを横目にキャップを外し、口を付ける。そのまま上を向くと、ごろごろと氷が落ちてきた。
いきなりの冷たさに少し驚きつつも、さっきまでの怠さがだんだんと消えていくような気がした。