目の前には、まじまじと俺を見る好奇に満ちた顔がふたつ。


「いけめん……」

「トーキョー……」


みどりは二人に挟まれて、体育座りをしている。さっきまで気まずそうに俯いてたくせに、俊彦がこの二人と一緒に客間に入ってきてから、その顔は生き生きとしている。人見知りするのか。

みどりのことは、まあ置いといて。とにかく、こうやって知らない人間に見られるのはいい気がしない。

そんな俺を見かねた俊彦が自己紹介するように言うと、二人は背筋を伸ばした。


「野口由香です」


先に名乗ったのは、右耳の下あたりで一つに髪を結んでいる女子。のぐちゆか、と頭にインプットする。

頭を下げた野口さんに、俺も小さく頭を下げる。

そして、みどりを経由して、もう一人に視線を移す。


「野口達郎です、よろしくー」


黒髪短髪、いかにもクラスの中心にいそうな感じのそいつは、やけに白くて綺麗な歯を見せて、にかっと笑った。

のぐちたつろう、と覚えようとして、一時停止。


「野口さんと、野口くん……?」


別に珍しい名字でもないし、気にすることはないんだろうけど。二人はどことなく雰囲気が似ている。もしかして兄妹だろうか。

そう思いながら首を傾げると。


「この町、野口さんの町なんよ」


さっきまで黙っていたみどりが、どこか得意げにそう言った。