「知らない。夏祭りがあるとか、初めて聞いたし」
「言ってなかったっけ? 八月の初めのほうにあるんやけど」
「ふーん」
「行くやろ?」
質問されているというより、もはや確認されているみたいだ。達郎の中では、俺も行くことになっていたらしい。
「っていうか、柊が来やんかったら、今年も俺一人になるし!」
「は?」
「いや、毎年由香とみどと行くんやけどさ、いっつも女子二人で盛り上がっとるからなー」
苦笑する達郎の話を聞いている限り、みどりと由香も一緒だというのは、もう決定事項だそうだ。
「じゃあ、行く」
断る理由もないし、珍しく達郎が必死に言うものだから頷くと、達郎は白い歯を見せて笑った。
「あ、柊くんも行くんだねっ! 私も行くから会えるといいなー」
「へー」
「パパの知り合いの人がね、私に似合うだろうって言って、浴衣をくれたから、それ着て行こうかなって思っててー」
延々と続きそうな相澤の話に適当に相槌を打っていると、みどりが荷物を詰め終えたようで。
「よっし、帰ろう!」
「……みどの鞄、パンパンやね」
また呆れたように笑った由香と、苦笑する達郎と、パンパンの鞄を持って立ち上がったみどりと一緒に。
クラスメイトがざわめいているのを少し眺めて、教室から出た。