たっくんは笑いながらも、引き止めることはしない。
それを容認されたのだと受け取ったらしく、柊は水道へと歩き出した。
「え、それならジョウロもついでに持って行ってくれたらいいやん!」
ふと思い付いて、柊の後ろ姿に叫んだけど、反応無し。
柊のことだからどうせ、面倒くさい、とかそういう理由なんだろう。
ケチだ、と頬を膨らます。
「……みど、頼んだでー」
「はーい……」
少し申し訳なさそうなたっくんの声に頷き、また足を進めた。
「柊さーん、どケチな柊さーん」
小走りで、その背中に追い付いた。だらだらと歩いていた柊は、振り返り、少し鬱陶しそうに眉間に皺を寄せる。
「どケチって何だよ」
「ジョウロくらい持って行ってくれてもいいのにさー、まったく」
これだから懐が狭い人は、とか言ってみれば、デコピンが飛んできた。
「うがっ」
地味に痛いけど、両手にジョウロを持っているから額を摩ることは出来ず。
むっ、と柊を睨めば、何故か鼻で笑われた。
「誰がケチだって?」
「え、柊が」
「……俺は空気読んだだけだし」
そう言って、柊は不貞腐れたようにそっぽを向いた。