「そうや、みど」

「ほ?」

「ジョウロ置いてくるついでに、蛇口捻ってきてくれやんか?」

「りょーかいー」


あ、それなら。


「じゃあ由香のジョウロもついでに持ってくわ」


隣の由香に、手の平を差し出す。

一瞬戸惑ったようだけど少し考える素振りを見せたあと、素直にジョウロを渡してきた。


「ありがとう」

「はいよー」


笑顔の由香に軽く返事をして、両手に持った空っぽのジョウロを揺らす。

そのまま水道まで行こうとしたら。


「みどり」

「あぐっ」


ブラウスの衿を後ろからぐっと掴まれた。


「もー、何するんよー!」


その犯人、もとい柊を睨む。首が絞まるかと思った。

当の本人は、そんなあたしのことは無視で、手を離すような気配はない。


「俺も水道行く」

「お?」


何故に?

そう首を傾げるけど、柊は真っ直ぐたっくんと由香を見ていて。


「プール掃除のときみたいになったら嫌だから、避難しておく」

「はは、柊は本当に心配性やなー」