「ゴーヤ、だいぶ大きくなったよねー」
隣を歩いていた由香が言う通り、少し前に支柱を立てて以来、ゴーヤは急激に成長した。
教室の窓をすっかり覆ってしまうほどで、緑のカーテンの役割をしっかりと果たしている。
「収穫してもいいんかな」
ジョウロの水を根元にかけながら呟く。
ところどころにあるゴーヤの実は、それはそれは立派な大きさになった。ちゃんと食べられそうだ。
「いいんちゃう? 明日先生に聞いてみよか」
「うんっ」
たっくんと柊は、水がなくなってしまったのか、ジョウロを持ってまた水道のほうへと戻っていく。
「ゴーヤチャンプル美味しいからなー」
「そやねー……」
ちらっと由香を見ると、一カ所にずっと水をあげたまま、どこか違うところを向いている。
その視線の先を追えば。
「……なるほど」
たっくんの後ろ姿を、綺麗な顔をして見つめていた。
「え、何がなるほど?」
「べつにー」
こんなに分かりやすいのに、どうしてあたしは長い間気付かなかったんだろう。今になって思うと、不思議で仕方ない。
「何よー、気になるやん」
「あ、水なくなった! 汲みに行こーっと」
「もー、話逸らさんといてよ」
不服そうに由香は言うけど、あたしは笑ってごまかした。