「まあ、それもいいかもしれやんけどねー……。新しい人間関係を作ってみるのも大事やと思うよ」

「……はい」

「みどりは、将来の夢とかある?」


隣に座っているお母さんも、あたしの顔を見ている。普段、お母さんとは進路の話をしないから、あたしがどう答えるのか、気になっているのかもしれない。


「……特にないです」


ああ、肩身が狭い。ここで熱く夢を語れたら、きっと話を広げることが出来るのに。


「あー、夢っていうと難しかったかな」

「え」

「じゃあ聞き方を変えるけどさ、みどりはこれから、どんなようになりたい?」


どんなように、……どんなように?

そんな聞かれ方は初めてだったから、頭をフル回転させる。よく考えてみるけど、全然自分のことのように思えなくて、どこか遠い話みたいに感じた。


「由香がいて、たっくんがいて、柊がいて、ごろごろ出来たらいいかなー……」


ぽつりと呟くと、雅子先生は吹き出して、お母さんは呆れたように息を吐いた。


「え、駄目ですか?」

「みどり、あんた最高やわー。そんなこと言ったの、初めてやで」

「まじか!」


あたしが初めて、ということは。他のみんなはもう、大体決まっている、ということだろうか。


「うわ、どうしよう、焦る!」

「そんなに焦って決めることでもないけどね。それに、大体の子は“家を継ぐ”って言っとったからなー」