「成績は良いほうですし、クラスでも楽しそうにしてますし」
じわり、額に汗が浮かぶ。扇風機の風力は“強”。首ふりもしてあるし、教室の窓だって全開なのに、暑い。
「しいて言うなら、登校してくるのがちょっと遅いってことくらいですかねー」
「そうですかー」
「遅刻は少ないんですけど、滑り込みセーフのときが多いので」
いつもより気合いの入った服を着たお母さんは、あたしの隣で愛想笑いをしている。
机の向こう側で、雅子先生もいつもより丁寧に話している。
机の上に置かれた成績表は、国語と理科と体育と音楽が5だった。
七月某日、放課後の今時分、教室では少し重苦しい雰囲気の三者懇談会が行われている。
「ところで、みどり」
突然、雅子先生があたしを見た。ぼんやりしていたから、驚きつつも、首を傾げる。
「第一志望は農芸って書いとったけど、もうそれで決まったん?」
来た、進路の話。身構えながらも頷くと、雅子先生は続けざまに質問をする。
「どうしてそうしようと思ったん?」
「みんなが行くし、近いし、いいかなーって思って」
正直にそう言えば、雅子先生は少し苦笑した。