みどりはそう言って、きょろきょろと辺りを見回す。
あぜ道に目当てのものを見つけたようで、ガッと手を伸ばすと迷いなくそれを掴んだ。
「げ」
「んあ?」
「よくそれ触れるな……、いやもう何も驚かないけど……」
みどりが掴んでいたのはミミズ。
俺も触れないことはないけど、女子が迷いなくそれを掴んでいるのはなかなかに衝撃だった。
まあ、女子といってもみどりだから不思議ではないけど。
「よっし、じゃあ釣るでよく見といてー」
枝の先にミミズを付けたみどりは、そう言って溝に枝を突っ込んだ。
正直そんな簡単な仕掛けで釣れるとは思わない。
「いやそれ無理だろ」
「もー、ちょっと黙っとってー」
ゆるやかに流れる水の中、みどりの持つ枝は真っすぐにザリガニへと向かう。
「ちゃんと見とってよー」
念を押すみどりに無言で頷くと、突っ込んだ枝の先がザリガニに到達した。
ザリガニは威嚇するようにハサミを開く。
そしてちょんちょん、とハサミを枝の先で刺激すると、案の定ザリガニは枝を挟んだ。