色とりどりのネオン、車のヘッドライト、LED信号機。
夜遅くの塾からの帰り道は、何かしらの光が街を照らしていた。
「そろそろザリガニ釣れる時期やなー」
この町は、穏やかすぎる。
「は? ザリガニ?」
「溝におるんよ、ザリガニ。あ、柊も行く?」
「いや、別に」
さっきまで真面目な話をしていたかと思えば。
みどりは自転車を押しながら、道の端の排水溝を眺めている。正直、拍子抜けだ。
「つーか、釣るわけ?」
「うん。え、もしかして釣ったことないん?」
「え、うん」
「まじか!」
これでもかってくらいに目を見開いて、みどりは立ち止まる。そんなに驚くようなことなのか。
「ザリガニがハサミで枝を挟んでくる、あの感覚を知らんの……!?」
「は? 枝?」
「だから、これくらいの枝を溝に突っ込んで……え、本当に知らんの?」
知っていて当たり前、みたいな顔をされても、知らないものは知らない。それよりも、枝をハサミで挟まれても、枝は折れないのだろうか。