「はーあー……」

「……」

「うーあー……」


大きな溜め息を吐きながら自転車を押すみどりの隣を、ヘルメットを手に持って歩く。

容赦なく照り付ける太陽の暑さに負け、ズボンの裾を三回曲げて、ふくらはぎ辺りの長さにした。

こうも暑いと、女子のスカートが少し羨ましくなる。


「あー……」

「……」

「はー……」

「うっさいんだけど」

「ぐっ、ひどっ!」


いつまでも溜め息を吐き続けていて、いい加減うるさかったから、それを率直に言うとみどりは項垂れた。

カラカラ、自転車のタイヤの音がする。


「つーか、なに。何がそんなに嫌なわけ?」

「何って、三者懇に決まっとるやん!」

「あー……、なるほど」


そういえば帰りの会で“三者懇談会のお知らせ”と書かれたプリントが配布された。

日付は夏休みに入る直前だったと思うから、きっと成績表が渡されるのだろう。


「面倒くさいなー。特別褒められるわけでもないやろし、怒られるわけでもないやろしなー……」

「ふーん」

「進路のこと言われても、将来の夢とか決まっとらんから、楽しくないしなー……」


そこでふと、思い付いたようにみどりは俺を見た。