勝手口のところが酒屋の入口になっているものだから、お客さんが来たらすぐに音で分かるようになっている。あの声は近所の小学生だろうか。
「おー、駄菓子か?」
「はよ来てー!」
だりいな、と呟いて立ち上がるトシちゃん。仮にもお客さんなのに、その態度はいかがなものか。そう思って眉をひそめるけど、そうしたところであたしの気持ちが汲み取られるわけでもない。
トシちゃんが襖を開けて、その土間へ下りていってしまうと、必然的に二人だけ客間に残された。
「……」
「……」
さっきまで笑いを堪えていた柊は、トシちゃんが去っていった途端、静かになった。
沈黙って気まずいし、どちらかと言えば、ずっとあのままでいてくれたほうが良かったな。そう思いながら、ちらっと顔を上げると、思いっきり目が合った。
「え、あ、えっと」
慌てて、何か言おうと口を開く。でも、とくに思いつく話題も言い訳もなく、ただぱくぱくするだけになってしまう。
結局、数秒考えてから目を逸らした。
「……」
「……」
ちりん、と風鈴の音がやけに大きく響く。
あああああ、どうしよう……、沈黙とかつらいんですけど!
間を埋めるように、麦茶を一口。唇の先にゴツッと当たった氷は冷たかった。ごっくん、飲み込もうとするが。
「ぐおっほ!」
「え、なに」
気管の変なところに入って、思いっきりむせた。
「おい」
「大丈夫です、ぐおっほ!」
「……あ、そ」