「はい、じゃー、テスト返すから、出席番号順に取りに来てー」


忙しなく日々は過ぎていき、なんとか期末試験も終わり。いつの間にか、カレンダーは七月になっていた。


「あっつー……」

「暑いな……」


夏本番になってきた暑さは、教室に取り付けられている二台の扇風機によって、心持ち緩和されているように感じる。が、それでも暑い。


この町は山ばかりだから、そんなに暑くならないだろうと思っていたのは間違いだったみたいだ。

自分を下敷きで扇ぎ、ぼーっと教室を眺める。


「うっわ、最悪や!」


突如、キンキンと高い声が聞こえた。

誰の声か、なんて見なくても分かる。ワタルだ。


「もー、ワタルうるさいー」

「きょんのほうがうるさいしな!」

「意味分からんわー。で、何よ、どうしたん?」

「名前書き忘れ……って、なんできょんに言わなあかんの!?」

「あー、名無しで0点、みたいな?」

「うっさいわ! みんなに聞こえるやろ!」


残念ながら、教室にいる人全員に聞こえていると思う。

哀れなワタルを尻目に、自分の解答用紙へと視線を移す。


「ねーねー、由香って五教科の合計いくつやった?」

「みどはどうやったんよ?」

「じゃあ耳貸してー」


みどりと由香は、二人して回りくどい聞き方をしている。普通に言えばいいのに。