もしそれが本当だとしたら、この町の星を見て育ってきたあたしは、他のところの星を見ても、物足りなく感じるんだろうな。


「夏の大三角！」

「は？」

「ほら、あれあれ」


一際輝く三つの星を指でたどり、宙に三角形を描く。


「ベガ、デネブ、アルタイル」

「そう、それ！」

「あれくらいなら、東京でも見えた」

「へー」

「こんなに明るくないし、三つともこれより小さかったように思うけど」


あの星くらいだったかな、と言いながら柊が指差したのは、本当に小さな星で。

今見えているベガやデネブやアルタイルとは大きさも明るさも全然違う。


「うっそお」

「もう少し大きかったかもしれないけど、多分あれくらい」

「へー……」


ぼんやりと呟いて、もう一度宙に三角形を描く。










その大きな三角形が、いつも以上に輝いて見えたのは、きっと。






――きっと、気のせいだ。