「で?」
「お?」
「どうしたわけ?」
「どうしたって?」
「何か用があったんじゃねーの」
そこまで言われて、ようやく用事を思い出した。
「そうそう! これ、お母さんがトシちゃんに渡してって」
「俊彦に?」
頷きながら、紙袋とタッパーを渡す。
リリリリリ、と田んぼのほうで虫の鳴き声が聞こえた。
「うん。トシちゃんから漫画借りとったみたいで」
「ふーん……」
「面白かったって言っといてー、って」
柊は紙袋の中を覗き、タッパーを眺め、頷いた。
用事も済んだことだし、暑いし、お腹すいたし、さっさと帰ろうとは思うものの、まだ少し話し足りない気がして。
ぼんやりと突っ立ち、空を見上げると無数の星が散らばっていた。
大小様々、明るさも銘々。チカチカと瞬く星は、いつ見ても宝石みたいだ。
「今日は星がよく見えるなー……」
呟くと、柊があたしの隣に立って、空を見上げた気配がした。
「……この町」
「ん?」
「この町は、星が多い」
「ほー?」
「こんなに星がうじゃうじゃしてるの、初めて見たし」
「うじゃうじゃって言わんといてよ……!」
トーキョーだと星があまり見えない、っていうのは聞いたことがある。
逆に、この町は星がよく見える、っていうのも聞いたことがある。
つまり、柊が言いたいのはそういうことだろうか。