「あー、大変やったなー……」
キーコ、キーコ。二人分の体重に自転車は悲鳴を上げる。
結局あのあと、雅子先生には呆れられ、他のみんなには笑われ。
スミレちゃんの機嫌は直らず、たっくんは肩身が狭そうにしていた。
「柊はいいよなー、部外者って感じやったもん」
「あっつー……」
「たっくんはずっとスミレちゃんに睨まれて可哀相やったなー」
「貧乳」
「微乳やって言っとるやろ!」
脈絡がなさすぎる会話をしながら、ペダルを漕ぐ。
「はーあー、それにしてもテスト嫌やなー……」
「あ、忘れてた」
「よくぞ忘れることが出来ましたな……」
そこまで言って、ふと思う。
そういえば柊って、賢いんだろうか。
なんとなく、頭が悪そうな感じはしないけど、実際どうなんだろう。
「柊って賢い?」
「え、別に普通だと思うけど」
「なにそれー、よく分からん答えやな」
ゆらゆら、ゆらゆら。
不安定な自転車は、でこぼこのアスファルトの上を進む。
「あ、じゃあさー、これ分かる?」
「なに」
「『社会契約論』で人民主権を唱えたのは誰でしょう!」
「ルソー」
間髪入れずに返ってきた答え。
「え、はやっ! 即答やん!」
驚いて振り向こうとすると、ヘルメットを押さえ付けられた。
「前向け、前」
「ういー」