「何なんトシちゃん!」
「好きな食べ物、そうめんとか……っ」
「は? そうめんの何が悪いんよ!」
意味分からん、むっかつく!
なんで笑われてるのかが分からないのが半分、恥ずかしいのが半分。八つ当たりのように心の中で暴言を吐いてトシちゃんを睨むけど、笑い止む気配はない。ボサボサの髪の毛が笑い声と共に揺れている。
助けを求めるように、柊を見る。
でも。
「なんで笑っとんの!」
俯いてはいるものの、肩が小刻みに動いていて。
あたしがそう言った途端、トシちゃんと同じように声を上げて笑い始めた。
「そうめん……っ!」
「そう、めん……」
「ちょっと二人とも、そうめんに罪はないでしょうよ!」
もう嫌だ、とコップの麦茶に視線を落とす。ゴロゴロと入っている氷は、まだまだ溶けそうになかった。
「そうめん……っ」
遠い親戚とはいえ、やっぱり血は繋がっているらしく、二人してタチが悪い。
意地悪く笑い続けるトシちゃんと、笑いを必死に堪えようとしている柊。どっちもどっちだけど、トシちゃんだけを睨んだ。
だって、柊を睨むのはなんか怖いし、出会ったばっかだし、何よりさっき自転車でひいてしまったという後ろめたさもあるし。
そうしていたとき。
「すみませーん、トシちゃーん」
広い土間を挟んで、この家と繋がっている酒屋のほうから声がした。