待てども待てども、一向に水は出てこない。
ちゃんと蛇口を捻ってくれたと思うし、ワタルが嘘を吐いているとは思えないし、どうなっているのだろう。
「えー、なんでなん?」
きょんちゃんはそう言いながら、ホースの口を上に向け、覗き込む。
あたしも隣から覗き込んでみるけど、水が出てきそうな気配はない。
「本当に捻ったー!?」
「捻ったし!」
ムッとしたようにワタルはそう言って、さらに蛇口を捻る。それでも水は出てこない。
可笑しいな、水道が壊れてたりするのかな。
もう一度、きょんちゃんの隣からホースを覗き込む。
スミレちゃんはやる気が喪失したのか、日焼け止めを塗り直し始めていた。
そのとき。
「あっ、ちょっとたっくん! ホース踏んどる!」
「え、……あ、ごめん!」
由香とたっくんのそんな会話が聞こえて顔を上げると、ちょうどたっくんが片足を浮かせていて。
なんだ、たっくんが踏んでたのか、と思った次の瞬間。