「どの辺に水撒いたらいい?」
「そやねー……、とりあえず、ここら一帯に撒いてー」
「分かった!」
由香の指示にきょんちゃんは大きく頷いて、ワタルたちのほうに手を振った。
「ワタルー、水出してー!」
「なんで俺なんっ!」
「そこにワタルがいるからやよ!」
ほら早く、と急かす。
ワタルは面倒くさそうにしていたけど。
「早く出してってば!」
「だから、俺以外にもいるやろ!」
「ワタルが一番暇そうやんか!」
「……あーもー、仕方ねーな!」
渋々そう言って、蛇口へと手をかけた。
「じゃー、出すぞー」
「はーい!」
返事をして、水が出てくるのを待つ。
ワタルは怠そうにだけど、ちゃんと蛇口を捻ってくれているみたいだ。
でも。
「……」
「……」
「……あれ?」
「ちょっとワタルー! 本当に蛇口捻っとるー!?」
「普通に捻っとるけど」
「全然水こやんのやけど!」