「由香、水って撒くんやっけ？　それともデッキブラシをバケツに突っ込むんやっけ？」

「撒くんちゃう？　バケツに突っ込むだけやったら、全然意味ないやろ？」

「そっかー、りょーかいー」


由香に敬礼してから、ぼこぼこにへこんだバケツを持ち上げる。

勢いに任せて、中に入っていた水をぶちまけると、スミレちゃんが小さく悲鳴を上げた。


「みどちゃん、足にかかった！」

「ほー、冷たいやろー」

「私の足にかかった！」

「うんうん」

「もー、ありえなーい！」


由香は苦笑しながら、あたしが水を撒いた部分をデッキブラシで擦っていた。

あたしも真似して、擦ってみる。スミレちゃんはいまだに日焼け止めを塗っている。


「あ、由香ちゃんみどちゃん、バケツの水足りとる？」


後ろから声がして振り向けば、首にタオルをかけたきょんちゃんがいた。


「お、きょんちゃん！」

「水かー……、足りとらんかもしれやん」

「え、さっき撒いたばっかやのに？」

「みど、よく見てみ。もう乾いてきとるやろ？」


由香に言われて見てみると、確かにさっき撒いたばかりのところは、すでに乾き始めていた。


「早すぎやろ……！」

「そんなもんやに。洗い流す水とかも欲しいし、足りとらんかな」

「じゃあ、わたし入れてくるわ」


そう言って手を差し出したきょんちゃん。

気が利くなー、と思いながら、からっぽのバケツを渡した。