「やばいやばい、着替えやんと……!」
「もー、私が言わないとみどちゃんたちはいっつも遅れるんだからー」
スミレちゃんの言葉は曖昧に聞き流して、ボータイを解き、ブラウスのボタンを外す。
ブラウスを脱ぐと、あらかじめ着ていた半袖の体操服がお目見えした。
ハーフパンツもスカートの下に履いているから、そのままホックを外して脱ぎ捨てた。
プール掃除だし、靴下も脱いでおこう。
「よっし由香、行こう!」
「ちょっと待って、みど早すぎるから」
……むう。
「ぎゃあははははは!」
「ちょっと男子、ちゃんとやってってば!」
「ゆかー、アメンボ浮いとる……!」
「うん、それはいいから、みどはここやって」
「ういー」
デッキブラシとバケツを持ち、あたしは由香の隣に立つ。
向こうのほうでは、ワタルが楽しそうに騒いでいた。
「まったく、男子ってこういうとき子供だよねー」
帽子を被ったスミレちゃんは、デッキブラシはその辺に放ったらかしで、日焼け止めを塗っている。
金色のパッケージの日焼け止めは、いかにも効きそうだ。
「スミレ、塗り終わったらここやってね」
「分かったー。あ、由香ちゃんも日焼け止め使う? これねー、三千円くらいしたんだけど、敏感肌の私にも使えるくらい良くってー」
「遠慮しとくわ」
たっくんはワタルの暴走を止めるのに大変そう。
柊はその隣でホースを持たされているような感じだ。