「あ、柊は?」
さっきから会話に入ってきていない柊に目を向ける。
「……なにが」
「え、だから、今話してたこと」
「……?」
ああ、そうですか、聞いてなかったんですね。
「高校の話やよ。柊はどこ行くか決めとんの?」
「あー……」
「それ以前に、この辺にどんな高校があるか知っとるんか?」
たっくんの問いに、少し考える素振りを見せる。その様子を見る限り、知っていそうな感じはしない。
「そっか、柊は知らんかー」
「……いや、一応は分かるけど」
「あ、そうなん?」
意外だな、と思いつつもう一度質問する。
「じゃあ、どこ行くか決めとる?」
あたし、たっくん、由香の視線を一身に受けた柊は、パタパタと下敷きで扇いでいた手を止めた。
そして、静かに目を逸らしながら、口を開いた。
「俺、は……」
「ちょっと、由香ちゃんたちっ!」
高い声に驚いて顔を上げると、体操服に着替えたスミレちゃんがあたしたちを指差していた。
「そろそろ着替えないと遅れるよ!」
「え、あれ、今から何やったっけ?」
「もー、プール掃除だよ!」
「あ!」
そうだった、すっかり忘れていたけど、今日はプール掃除の日だった。
慌てて教室を見渡すと、もう大体の人が着替え終えている。