楽しいことがあった後は、大抵の場合、楽しくないことがあるわけで。
「泣きたい……!」
配られたプリントを見た瞬間、あたしは机に突っ伏した。
「あー、範囲広いなー……」
「いつもより提出物多くなっとるよね……」
プリントに大きく印刷された“期末試験範囲”の文字。
ついこの前、お泊り教室だったというのに、先生たちは意地悪だ。余韻に浸らせてくれさえしない。
「何だかんだで、俺たちも受験生やからな」
「そっか、まだ全然自覚ないわー」
柊は黙ったままプリントを眺め、パタパタと下敷きで自分を扇いでいる。
すっかり夏本番の暑さになってきた今日この頃。
「そういえば、たっくんと由香って、どこの高校行くか決めた?」
プリントを適当に折り、クリアファイルに突っ込む。
「私は普通に、農芸高校かな」
「俺もそうすると思う」
「やっぱり、そうやんねー」
この学校の生徒の大部分は、ここから一番近いところにある公立の農芸高校に進む。
この町では、家業を継ぐっていう考え方がまだまだ残っているから、農家の子であるたっくんと由香は、間違いなくそこに行くだろう。
「みどはどうすんの?」
「多分、農芸高校かなー」
あたしは特に跡を継ぐ必要もないから、自由に出来るんだけど。
将来の夢があるわけでもないし、近さとかを優先して考えると、やっぱり農芸高校を選ぶと思う。