そういうの、って恋愛感情とか、そういう系統のことだよな。
自分の中で少し考えてから、首を縦に振った。
「何となく、分かると思う」
朝日は、徐々に丸い姿を現していく。辺りもだいぶ明るくなっている。
「トーキョーの彼女?」
「……は?」
いきなり落とされた呟きに、素っ頓狂な声が出た。
みどりは不思議そうに、そんな俺を見る。
「柊は、トーキョーに彼女がおるんと違うの?」
「え、いないけど」
「あれ、そうなん?」
「どこ情報だよ、それ」
呆れつつそう聞くと、みどりは守秘義務だとか言って、口を割らなかった。まあ、別に何でもいいけど。
「じゃあ、柊は好きな子とか……」
「いないけど」
「いないのにそういうの分かるんっ!?」
「だから、何となくって言ったし」
実際、人のを見ていたら分かるだろう。
そう付け足して言ったけど、みどりは眉間に皺を寄せて、難しそうな顔をしていた。
「うーん……、分からん」
「だろうな」
「うっさいー。でも柊だって、何となくしか分からんのやから、仲間やな!」
けらけらと笑ったみどりは、嬉しそうに見える。何がそんなに嬉しいのか分からないけど、もうみどりは勝手にしていればいいと思う。
太陽は半分ほど山に隠れたまま。
みどりの細い髪が、きらきら輝いていた。
「ずっと、このままでいたいのになー……」
小さなその声には、聞こえていないふりをした。