目の前の学ランさんと、数時間前に学校で噂の中心だった転校生が、イコールで結ばれた。

もう一度、まじまじと学ランさんを見つめる。


「ほら、一応自己紹介しとけ」

「……」

「学年にひとつしかクラス無いから、結局お前らクラスメイトになるし」


トシちゃんの命令を受け、学ランさんは一瞬面倒くさそうにしたけど、その言葉であたしを真っ直ぐ見据えた。



「佐藤柊。ひいらぎって書いて、シュウ」


よろしく、と小さく頭を下げた学ランさん、もとい柊につられて、あたしも頭を下げる。


「おら、みどりも」


そうやってトシちゃんは言うけど、正直自己紹介なんて生まれて初めてのような気がする。

この町の人はたいてい顔見知りだし、クラスもずっと同じメンバーだし。他の学校では、新学期恒例らしい新しい友達を作る必要もないし、先生もこっちがわざわざ名乗らなくても覚えてくれる。つまり、今まで人生で自己紹介する場面がなかったわけだ。


とにかく頭をフル回転させて、ドラマとか漫画とかでよくある感じのものを引っ張り出して、口を開いた。



「竹内みどりです。好きな食べ物はそうめんです」



こんな感じでいいのかな、と思いつつ、頭を下げてみる。




「……ぶっ」


なかなか上手くできたと自負してたのに、それはトシちゃんの笑いによってあっさりと壊された。