「りぃ、耳貸して」
意を決して耳打ちする。
「実は、拓海先輩の家なんだよね、その喫茶店」
「……はぁぁぁぁぁあ!?」
りぃの叫びに、教室中の生徒の視線がこっちに集まった。まるで、針の筵に座ったかのよう。背中にダラダラと嫌な汗が伝い、私はりぃの両肩をむんずと掴んで引き寄せた。
「ちょっと、りぃ!!」
──生命がけで打ち明けたのに!
バレたら私の平和な高校生ライフはガラガラと崩壊する。これは、絶対機密事項なのだ。
「ご、ごめん……でも、つい」
「つい、で、親友殺す気!?」
「ごめんって!でも、何でそんな事になってんの?」
話すと長いけど、私はクラウンに体当たりされた辺りから今に至るまでを説明した。
「ってわけで、喫茶店でバイトをする事になったの」
「へぇ、まさか拓海先輩にそんな力があったなんてね」
「あ……信じてくれるの?」
漫画みたいな話だって、笑うか馬鹿にされるかのどちらかだと思っていた。けどりぃは、普通に受け入れているようだった。
「え、だって来春は信じてるんでしょ?」
「うん」
「なら、私も信じるに決まってんじゃん。これでも来春とは中学からの親友なんだから、あたりまえっしょ」
さも当然でしょう、みたいな顔で言うもんだから、私は体の奥底から湧き上がってくる感動にどんだけ出来た親友なんだ!と心で叫ぶ。
「りぃ~っ!!」
喜びのあまりヒシッと親友に抱き着くと、りぃは苦笑いでよしよしと背中を撫でてきた。