「愛とか絆とかって、目には見えないけど……」
例えば、男性が女性に指輪を贈り、愛を誓うように。お嫁さんやその家族が嫁入り道具をお婿さんの家へ持参し、家族の契りを交わすように。
「アンティークって、目に見える想いみたいなモノだよね。私達って、それを守るお仕事をしてるんだなーって感動しちゃった!」
言葉に出来ない想い、何代も積み重なる想い。その声なき声を届け、伝え守るお仕事に私はやりがいを感じていた。
「来春って、たまにすごい事言うよね」
「え?」
空くんが驚いたように私を凝視してくる。
──私、すごい事なんて言ったっけ……?
思い当たる節が無く、空くんを見つめ返すと「……確かにな」とさっきまで静かだった拓海先輩までもが便乗した。
「え、何、どういう事!?」
聞き返す私に、拓海先輩は珍しく口角を上げて笑った。
「つまり、そのままでいいって事だ」
「だね」
2人は納得するように、うんうんと頷く。
「置いてきぼりにしないでくださいよ、もう!」
教えてくれてもいいのに、仲間外れにされたみたいで私は拗ねる。
でも、2人が楽しそうだからいっか、なんて。そう思うのは、レアな拓海先輩の笑顔が見れたからかもしれない。