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邸を出ると、すっかり暮れた夜空の下、私達は迎えの車を出してくれている深海さんを、門の前で待っていた。
「鏡のリペアをしても、売り物にはできないね、あのベネチアンミラー」
空くんがぽつりと言う。結局、リペアの依頼は続行し、空くんが請け負う事になった。ただし、売り物にしたいからリペアするのでは無い。
「あれね、2人の真実の鏡にするんだって」
「何、それ」
実はあの後、私は2人からこの鏡のリペアを頼みたい理由を聞かされていた。
「同じ罪を犯さない様に、この鏡の前では必ず真実を話す事。そう2人で約束したらしいよ」
「へぇ……」
あの鏡は最初、2人を引き裂く悲しみの象徴でしかなかった。だけど今は違う。
お互いの本心を隠さずに、すれ違う事がないようにするために、あの鏡は2人をこれからも繋ぐ役割を担ったのだ。
「2人の大切な宝物なら、リペア頑張る」
「空くん……ありがとう」
空くんの言う通り、こうやってアンティークは人と人とを繋ぎ、受け継がれていくのだと実感した。