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すこし出かけてくるよ、とリクが言ったとき、私は泣きそうになった。
どうしてそんなこと言うの。
ここは私たちのエデンなのに、どうして出ていくの。
泣いて追いすがる私をあやすように、リクは私の頭を撫で、おでこにキスをくれた。
近くの店で食べ物を手に入れてくるだけだよ、心配しないで、すぐに戻るから。
リクはとても穏やかで優しいけれど、マイペースで頑固だから、一度言い出したことは曲げない。
それが分かっていたから、しばらくごねた後、私は仕方なくリクを送り出した。
待っている間、唇に残った林檎の香りとリクの感触を何度も確かめながら、ベッドに横たわってひたすら天井を見つめていた。
久しぶりのリクの不在は、私の存在を根幹から揺るがすほど、私を不安にさせた。
早く帰ってきて、リク。
寂しくて悲しくて怖くて仕方がないよ。
泣きながら待っていると、玄関のほうから物音がした。
私は勢いよくベッドから飛び降り、玄関まで駆けてドアを開けた。
次の瞬間、私は絶望した。
「海! ああ、こんなところにいたの」
ぽろりと涙の粒を落とし、感極まった声で抱きついてきたのは、お母さんだった。
「探したのよ。もう、本当に、気が狂いそうなほど心配で………よかったわ、見つかって」