私は黙って窓を押し上げ、黒蛇を指先でぴん、と弾いた。


黒蛇は真紅の舌をちろちろと動かしながら、風に乗ってどこかへ消えていった。



ばいばい、悪魔。


私は小さく笑って手を振る。



あなたに誘惑されなくたって、私とリクは、欲望に勝てない。


罪だと分かっていても、世間から許されないと分かっていても、私たちは禁断の果実が放つ甘美な罪の香りに酔って、きっと何度でも食べてしまう。


そして、歓喜の美味に囚われて、溺れて、もうその誘惑からは逃れられない。



いいの、それでも。


罪だろうと悪だろうと過ちだろうと、もう二度とやめられないし、戻れない。



「…………」



私は窓を閉め、リクに向き直った。



「………リク。もうひとくち、私も………」



林檎をつかむリクの手首を握り、私は林檎の香りがするリクの唇を味わう。



「………おいしい。もっと」



リクが私の頭を抱えて、くちづけを深めた。



頭の中は、熱くて真っ赤だ。

なにも考えられない。



触れ合った部分はどんどん溶けて、ぐちゃぐちゃに混ざり合って、どちらがどちらだか分からなくなる。


どうしてこんなふうに一つになっちゃうんだろう、と何度も思った。



でも、やっと答えが分かったよ、リク。


きっと、血のせいだよ。

私とリクの血はおんなじだから、だからこんなにも溶け合うんだ。



他の誰よりも、私とリクは、おんなじなんだ。


この皮膚の下を流れる血が、

真っ赤な罪悪の果実とおんなじ色の、血が、


あなたを求めてやまないの。



だから、もう、どうしようもない………。






*Fin...