「兄妹なのよ………あなたたちは、血の繋がった………正真正銘の」


「…………」


「それなのに………いつから、どこから、こんなおかしなことになってしまったの」



お母さんはこの世の終わりみたいに嘆いている。


その嘆きの声は私の中をただ通過した。



どうでもいい。

リク以外のことは、どうでも。



「………海、行きましょう。お母さんと一緒に。お兄ちゃんが戻ってくる前に」



お母さんの言葉の意味がのみこめず、私は怪訝な顔で見つめ返した。



「ねえ、海。とにかく、お兄ちゃんから離れるの」


「離れる？ 嫌に決まってるでしょ、ありえない。何を言うの」


「でも、あなたたちは一緒にいちゃだめなの。離れなきゃ………離れたらきっと冷静になれるわ」


「………冷静？」


「そうよ。あなたたちは兄妹仲が良すぎたのよ。一緒にいすぎて、距離感が分からなくなってしまったのよ」


「距離感？」


「いつも二人でお留守番させていたものね………お母さんが悪かったわ」



何を言っているんだろう、このひとは。


何も分かっていない、私とリクのことを。


私とリクがどれほど深いところで繋がり合っているのか。



「ねえ、海。依存と恋愛はちがうのよ。陸と海の、お兄ちゃんとあなたの関係は、恋愛感情なんかじゃないの。ただの依存よ。仲が良すぎたから………一緒にいすぎたから………」