「こっち、まずは私を映すのよ! なにやってんのよ」


女性は厳しく言うと、髪型を手で整えて深呼吸をする動作をした。


「顔は映さないから安心して。声も変えるから」


私に向かって短く言う。

なに、なんなの?

私の困惑はよそに、女性はカメラに向かって話し出す。


「さて、私は今、私立七尾高等学校の前に来ております。生徒さんに話をうかがえることになりました」


なんの了解もしていないのに。

でも、それより・・・・・・。

もしかして、もしかして、江梨子が?


「松下江梨子さんが2週間以上も行方不明なのは知っていますか?」


目の前に灰色のマイクが差し出された。

やっぱり。

胸が苦しくなり、私は答えられない。

隣の友季子が、

「知っています」

と答える声が聞こえる。


「親しかったんですか?」


友季子が答えてくれる、と確信したのか、マイクがそちらに向く。