「琴葉」


「ん?」


結城が、一歩私に近づく。


「寮母さん、って今いるのか?」


「寮母・・・・・・ああ、よしこちゃんならいるよ」


ほんとは寮父だけどね。

まぁ、結城に説明しても理解してもらえないだろうな。


「そうか」


そう言うと、結城はスーツケースを持ちあげて私の前を通って寮の玄関へと向かう。


「え? なになに。よしこちゃんに用事なの?」


「ああ」


玄関の前に立った結城が、ネクタイをぎゅっとしめなおした。


「許しをもらわなくちゃならん」


「許し?」


ほんと、結婚の申しこみみたい。

いったいどうしちゃったんだろう?

結城は振り返って、私を見て言う。


「お前と一緒に住む許しをもらうんだ」