「すみません、ちょっとお話をうかがいたくてですねぇ」


申しわけなさそうに橘が頭をかいた。


「え? 今?」


「結城刑事が会議室でお待ちです」


その名前にドキッと胸が鳴る。

あの日以来、一日も忘れたことがない顔がまた脳裏に浮かんだ。


・・・なんで?


あんな自分勝手でムカつくやつなのに、なんで気になるの?

なんで心に居続けるのよ。


「行きたくない」


知らずに私は声を出していた。


「琴葉?」


友季子が顔をのぞきこむ。


「行きたくない。なんで協力しなくちゃいけないの? 話なんかしたくない」


両手をぎゅっと握りしめていた。


会いたくない。


会いたくない。



会いたい。



違う、会いたくない。