「そうよね。琴葉ちゃんは、友季子ちゃんを助けようとしたんだもんね。ああ、友季子ちゃん」

よしこちゃんは人目もはばからず涙をぼろぼろとこぼしている。


ちがうの、よしこちゃん。


ダメなのは私。


恋なんてしちゃったから、だから結城の言葉に耳をかたむけてしまったの。

すぐにでも飛び出して行って止めるべきだった。


「石田さん」


警察署の外階段を、橘が駆け足で登ってくるところだった。


「橘さん。あの、友季子は・・・・・・」


静かに首を振る橘に、足元の地面が崩れてゆくような気分になる。


「石田さんの言う黒色の車は、町外れに乗り捨てられていたよ」


「じゃあ、持ち主から」


「いや」橘は眉間にシワを寄せた。

「盗難車だったんだ」


「また? じゃあ、友季子は・・・・・・」


「今、必死で捜索している」


疲労をかくせない橘がぽつりと言った。