………それなのに、この雪が、私に彼を思い出させた。


この世のなにもかもを覆い隠し、消し去った雪が、むしろ私の想いだけは甦らせた。



どうして?

どうして彼への想いだけは消してくれないの?


こんなにも苦しいなら、もういっそのこと捨ててしまいたいのに。

すっかり忘れてしまいたいのに。



どうして思い出させるの?


どうして消してくれないの?

せめて覆い隠してくれないの?


どうして私は彼のことを忘れられないの?


彼は死んでしまったのに、

こんなにも彼が恋しい。

こんなにも彼に会いたい。


もう会えないのに、会いたい。



どうして、どうして、どうして。


会いたい、会いたい、会いたい。



冷たい雪の中に埋もれて、音もなく涙を流しつづけながら、私はいつしか眠りについていた。