気がついたら、私は外に出て、降り積もる雪の真ん中に立っていた。


裸足のまま。


一瞬にして爪先が感覚を失う。



でも、目の前に広がる純白の世界が、手招きをするように私をいざなっていた。


私は導かれるようにゆらりと歩き出した。



わたぼこりのような細かい雪が、はらはら、はらはら、舞い降りてくる。


目で追っていると、降り積もった雪の上に音もなく降りて、次の瞬間には馴染み、もう見えなくなる。



視界は全て、白。


降る雪の白、積もった雪の白。



雪は世界の全てを白く塗りつぶし、きれいなものも、きたないものも、全部、隠してしまう。


家も、ビルも、道路も、樹も、土も、何もかも。



音さえも雪に吸い込まれて、街はぞっとするくらいに静かだった。



話し声も、足音も、車のエンジン音も、朝ごはんを作る音も、犬の鳴く声も、なにも聞こえない。




この世の全てを、雪がかき消している。