―――わからない。



あなたでなければ駄目なのだと、泣き叫ばずにはいられないような恋を、

したことがない人には。



手の届かないものが欲しくて欲しくて、どろどろに融けてしまうような恋を、

したことがない人には。



触れてはいけないものに焦がれて焦がれて、燃え尽きてもなお、求めてしまうような恋を、


底なし沼に魂ごと引きずり込まれるような、溺れるほどの、狂おしいほどの恋を、


世界にその人さえいれば、他には何ひとついらないと、確信できるほどの恋を、


その人がいない世界では生きていられないと、そう叫べるほどの恋を、


身も心も全て捧げてしまえるほどの、どうしようもないほどの、深い、深い恋を、


したことがない人には、わからない。



私がどれほどの幸福感の中にいるのか。

私がどれほどの絶望感の中にいるのか。