もうだめだ、と実感した。


私はもう、満足できなくなってしまった。



目を見開いて、上から見下ろしてくる陽さんの顔を見つめる。


だいすきな人。

私の身体で悦んでいる。


でも、それだけでは、私はもう満たされない。



ぼんやりと天井を眺め、時が過ぎるのを、陽さんが終わりを迎えるのを、静かに待つ。



ふいに陽さんが息をつめ、身体が重みを増した。


しばらくして、陽さんが身を起こす。


枕に顔をうずめたままじっと見つめていると、陽さんが気だるげに煙草に火を灯しながら、小さく首をかしげた。



「どうした? いけなかった?」



私は曖昧な微笑みを浮かべ、ゆっくりとベッドから降りた。



裸の肌を冷気が包み込む。


ぶるりと震えながら、それでも衣服を纏わないまま、冷蔵庫からミネラルウォーターとチョコレートを取り出した。



水で喉を潤してから、チョコレートを見つめる。


たっぷりと毒が染み込んだチョコレート。



「俺にも水、くれよ」



陽さんがベッドの上でそう言った。


私は頷き、陽さんのもとに戻る。



隣に腰かけて、陽さんにペットボトルを渡した。


陽さんは喉を鳴らしながら水を飲み干す。


筋の浮いた首筋に、幾筋かの水が伝った。