かすかな物音を聞いて、ふっと目が覚めた。


身を起こし、玄関のほうに注意を向ける。



こつ、こつ、という足音が聞こえてきた。


確かめなくても、わかる。


私の耳には、この足音だけは、他のすべての音から際立って聞こえる。



私は弾かれたように立ち上がり、玄関へと駆けた。


震える手で鍵をあけ、勢いよく扉を開く。



「―――陽さん」



かすれた声で愛しい名を囁き、待ち焦がれた身体に抱きつく。



ふっ、と笑う声が上から聞こえた。


顔をあげると、陽さんが優しげに目を細めている。



ああ、好き。

好きだ。

このひとが好き。


あいしてる。



私は陽さんの手を引き、部屋に引き入れた。


リビングまで連れ込み、ソファに座らせる。


部屋が寒すぎることに気がついて、慌ててエアコンのスイッチを入れた。



陽さんはいつものようにソファにゆったりと凭れている。


すっと手を引かれ、腰をつかまれた。


それだけで、火が点いたように身体が熱を帯びるのを感じる。



「陽さん………」


「いい?」


「うん………」



首筋を撫でられ、えりあしに指が差し込まれる。


すっと引き寄せられて、私はうっとりと身体を預けた。