しんしんと夜が更けていく。


部屋中がひんやりと凍っていく。



私は冷たい床から立ち上がり、ゆらゆらと泳ぐように歩いて、キッチンに入る。


冷蔵庫の扉を開けて、中のチョコレートを確かめてみた。

甘い、甘い、毒入りチョコレート。


それを彼が口に含む瞬間に、思いを馳せる。


それだけで、歓喜が全身に満ちるのを感じた。


もうすぐ彼が私だけのものになる………。



私はくすくすと笑い声を洩らしながら、リビングのソファに身を横たえた。


このソファでも彼に抱かれたことがある。


横たわっていると、その記憶に支配されて、まるで快楽の波間にいるような気がした。



目を閉じて、瞼の裏に彼の姿を思い浮かべる。


私を抱いているときだけは、彼は私をまっすぐに見つめてくれた。


黒く澄んだ彼の瞳に、私の顔がうつっているのを見るだけで、私はぐずぐずに崩れ落ちるほど幸せだった。


彼を殺したら、ずっと、そんな幸せの中に生きることができるのだ。


夢よりもっと美しい世界。



―――幸福な記憶と空想に浸っているうちに、私はいつのまにか、微睡んでいた。