「ホント、キャラが違うったら」


歩きながら隣の子犬もどきを見上げると、彼は不本意そうに私を見つめ返す。


「俺の二面性を楽しめて、沙都子さんは喜ぶべきです」


クールで、征服者である葦原五弦は、会社では上手に化けているに過ぎない。
私は本性の彼ばかり見ているので、オフィスでの彼はギャップそのもの。当初感じていた違和感からすれば、納得ができるものなんだけど。


「さっきの」


「なに?与野とのやりとり?」


「大事にしてるってのは本当です。大事に壊してる最中ですから」


「全然フォローになってない」


壊すは置いておいて、大事にっていうのは、確かに感じることがある。
葦原くんは私を丁寧に抱く。
避妊は当初からほとんどしてくれていたけれど、行為そのものに優しさを感じるようになったのは最近だ。

どんなに激しく求められていても、キスはいたわるように甘く、髪や手に触れる所作には優しい情を感じる。