「そっか。なら、よし。
あのさ、俺、どうして陽鶴ちゃんがここまで美月ちゃんたち二人の為に自分を犠牲にするのかって思ってて」

「犠牲? そんなつもりないけど」


首を傾げて言う。

別に、何かを我慢しているわけでもなんでもないし。
美月ちゃんと一緒にいるのは楽しいし。

それを言うと、穂積くんが「そうなんだよな」と楽しそうに笑った。


「それが、陽鶴ちゃんの本心なんだよな」

「うん。そうだけど」

「普通さ、言えないよ。毎日眠い顔して、慣れない料理してさ。指、何回切ったのさ」

「う。バレてた?」


思わず両手を後ろに隠す。
あ、さっき手を掴まれてたんだった。
とっくにバレてたか?


「しかも、体を貸すんでしょ。普通、嫌だよ。話を聞いてたらさ、体を貸してる間って陽鶴ちゃん、何もできないんでしょ? 何もできずに見てるだけって、けっこうきついよ」

「その間寝てたらいいかなって思ってるから、特に」


魂だけでも眠ることができるというのは、私の足元で安眠タイム中の美月ちゃんで実証されている。
寝ておけばいいのだ。
穂積くんが笑う。


「俺さー、陽鶴ちゃんが何考えてるのか本当に不思議でさ。あんまりにも、二人の為に頑張りすぎてるから」

「だから、頑張ってるって意味が分かんないな。やりたいことやってるだけだもん、私」

「うん。それがよく分かってさ、なんか俺嬉しいんだ」

「はあ」


私はよく分かんない。