「うん。でね、なんとなく乗っ取れる条件も分かってきたし、明日のお昼ご飯の時間は美月ちゃんが私の中にいるようにしたいんだけど」


園田くんが、ぱっと顔を明るくした。


「それ、マジ?」

「うん。体を貸すことに特に問題もないし、大丈夫だと思う。私の家族も気づかなかったくらいだから、周囲に違和感を与えることもないだろうし。
だけど、万が一を考えて、食堂じゃなくってもっと人気のないところで会うのがベストじゃないかなって。慣れたら、ここでも大丈夫だろうけど」


私の言葉に頷いたのは穂積くんだ。


「そうだね。最初は、どんなトラブルがあるかわかんないもんな。
じゃあ、苑水公園の東屋はどう? 食堂ほど人はいないし、日陰だから涼めるし」

「あ、いいね。人に話を聞かれる心配もないよね」

「明日は丁度、陸上部の練習はないんだ。陽鶴ちゃんは、美術部は?」

「大丈夫。毎日出なくちゃいけないって決まりはないもん」

「分かった。じゃ明日の何時にしようか」


待ち合わせの時間などを穂積くんと決める。
と、ふいに手を掴まれて驚くと、それは何と園田くんだった。
園田くんは、私の顔をじっと見つめてくる。


「そ、園田くん? どうしたの?」


まっすぐに私を見てくる目と、掴まれた手を交互に見る。
こんなに園田くんに見られたのは初めてのことだと思う。
無駄に心拍数が上昇していった。


「ありがとう」

「は?」

「ありがとな。そこまでしてくれて、お礼の言葉もない。マジで感謝してる」


ぎゅっと私の手を握り、園田くんは熱っぽく言う。

園田くんは、目の色素が少し薄くて、薄茶色の瞳をしている。
その瞳を真正面に受け止めて、私は言葉を失った。
ダメだって。
待って、こんなの心の準備ができてない。

『美月ちゃんだけ』の視線を向けるの、やめて。
びっくりするどころじゃないんだけど。

その上、園田くんはにっこりと笑った。
優しくって人懐っこさの滲んだ、思わずどきりとする笑顔に、私は心拍数と共に体温までも上昇するのを感じた。

このままだと、沸騰する。