「――というのが、この数日の結果です」
レポート用紙に書いた報告内容を、私は厳かに二人に読み上げた。
二人とは勿論、園田くんと穂積くんである。
「乗っ取る、ね。なるほどそんなことも出来るのか」
腕を組み、ため息をついたのは穂積くんだった。
「いやでも、納得せざるを得ないよ。だって、この三日間のお弁当の出来は、良すぎる」
私たちの目の前には、今朝美月ちゃんが私の体を乗っ取って作ったお弁当の空容器がある。
ええ、そうでしょうとも。
細かな味の調整や焼き具合は、私なんかが及びもつきませんとも。
抜群の加減ですよ。
焼き色の、色味一つとってもそう。
私じゃあちょっと出せない色ですよ、ええ、
しかしだからこそ、話の真実味があるというもの。
「福原さん、今、美月はどうしてるの?」
訊いたのは園田くんだ。私は彼女の方を見ながら言った。
「爆睡中。私が移動するときは、ふわふわと浮きながらついてくる。
だけど、本人は全っ然起きないんだ」
美月ちゃんは、リノリウムの床の上で気持ちよさそうに眠っていた。
今朝は張り切って料理をして、私の家族の朝食まで作ったものだから、タイムリミットを過ぎて強制退出してしまったのだ。
ちなみに、朝食はとてもとても、好評だった。
母など、「ヒィがこんな素敵な朝ごはんを作れるなんて、奇跡だわ」だなんて言っていた。
ええ、奇跡のようなものですよ。
美月ちゃんという名のドーピングですよ。
「起こそうとして、どれだけ声をかけても起きないの。部室で杉田先生が大絶叫してても、ピクリともしなかった」
「杉田の声で起きないって、相当だね」
ふうん、と穂積くんが腕を組む。
あの怒声の響く中寝られるというのは、通常では異常と呼ばれるはずだ。