「え? どういうこと?」


訊いたのは私だ。
長尾くんの言っている意味が分からない。


「だからー、杏里と福原さんが二人で弁当なんて食ってたら、福原さんに非難が行くかもって思ったんだ。
これから一緒に行動することも増えるだろ? そんな時いちいち言い訳するのも面倒だろ。だったら、俺が福原さんのこと狙ってるってことにしたら話が早いじゃん。で、初日でこれは上出来でしょ!」

「お前、そんなこと考えてたのかよ」


園田くんが驚いた声を上げる。
私も同様だった。
周囲の目なんて、考えてもいなかった。

だから、長尾くんは一緒にご飯を食べたいと言っていたのか。


「すごい、穂積くん!」


横で美月ちゃんも同じように言っている。
みんなの尊敬の目を一身に受けて、長尾くんがぷう、と頬を膨らませた。


「お前たち、もう少し周りを見ようよ。
特に杏里な。彼女を喪ったばかりの男がさ、他の女の子の作った弁当を美味そうに食って笑ってたら『クソ男』の烙印押されるぞ。
でもって、福原さんに『人の弱みに付け入るクソ女』の称号を与えることになるんだぞ」

「う……」


園田くんは口ごもって、それから私に「悪い!」と頭を下げた。


「俺、もっと考えるべきだった! ごめん!」

「い、いや、私も何にも考えてなかったし。美月ちゃんだってそうだよ。ねえ?」


横に問えば、美月ちゃんがコクコクと頷く。そして美月ちゃんも、「ごめんね、ヒィ!」と頭を下げた。


「コユキたち、ホントはすごくいい子たちなの。だからごめん!」

「いや、大丈夫。傍目から見たら、私が超絶嫌な女に見えるのは分かる」