「穂積が? 福原さんを? 嘘でしょ」

「彼女はしばらく作んないって言ってたじゃん!」


彼女たちが口々に長尾くんに迫る。しかし長尾くんは笑みを崩さないまま続けた。


「陽鶴ちゃん、すっげえ可愛いじゃん。ちっちゃくって小動物みたいだし、今、すげえ好きなの。
だから、お願い。邪魔しないで? やっとここまでこぎつけたのに、フラれたら俺コユキちゃんたちを恨むからね?」


爽やかに、しかしはっきりと言う長尾くんに、渡部さんたちは「信じられない」と言った様子で私を見た。
しかし、彼女たちが何か言う前に、長尾くんが念押しするように「本当に恨むからね?」と繰り返す。


「悪いけど、向こう行ってくれ」


後を追うように、ぼそりと園田くんが言う。
その声には苛立ちが滲んでいた。


「わ、わかった。何か、ごめんね」

「福原さん、穂積をフッてもあたしたちのせいにしないでよね」


彼女たちはまだ顔に不満を滲ませていたが、園田くんと長尾くんに嫌われたくはないのか、バタバタと走って行った。


「噂好きのバレー部が来てラッキー」


彼女たちが立ち去った後、にひひ、と笑ったのは長尾くんだった。


「思ってたよりうまくいったなあ。これで、もう誰も俺たちが一緒に行動してても口出ししないよ」