私は、美術部所属だ。
専門は油絵。

小学生の時に『エドガー・ドガ』の踊り子を見て以来、
一瞬の煌めきのような世界を描きたいと思ってやまなくなり、絵筆を握った。


淡く繊細なタッチは、まず最初に私を惹きつけた。
あんな愛らしくて綺麗な世界を、私は初めて見た。

そして、次に魅了されたのは、キャンバス全体から漂う躍動感。

今にも踊り子の裾が舞いそうで、
腕がしなやかに動きそうで、
目を離したら本当にそうなりそうで、
その緊張感に夢中になった。

ドガは、他愛ない瞬間を永遠に変える。
そして、永遠に来ない『次』を見る者に想像させ、与え続けるのだ。

絶妙の時間を切り取るセンスと、その美しい筆致に、私は数年たったいまでも魅了されている。

あまりに『ドガ、ドガ』と言う私の為に、父は彼の代表作である『エトワール』のレプリカをプレゼントしてくれた。
これは今でも私の大切な宝物だ。
私の部屋の中で、一番いい場所に大切に飾ってある。


名画というのは毎日見ていても飽きないもので、どころか新しい気付きを与えてくれることもある。
私は何度、あの絵によって己を見直し、新しい一歩を踏み出せたかしれない。


……おっと。ちょっと熱が入りすぎた。
まあ、明日香のいう通りの、絵画オタクだと思ってくれていいです。