翌日の朝は、戦争だった。

たくさんの材料を前にした私は、戦闘力ほぼゼロであるがゆえに、何を作るのかも分からないでいた。
しかも三人分のお弁当である。
朝五時には起きたけど、昼に間に合うだろうか。


「美月ちゃん。ちょっと心が折れかけてる、私」

「大丈夫! 今日は簡単なものにするから!」


美月ちゃんは、やるべきことができてすごく張り切っていた。
園田くんと話ができた後ということもあってか、笑顔も溌剌としている。


「では、よろしくお願いいたします」


私は師匠にそう言って、深々と頭を下げたのだった。

まあ、どれだけ大変だったかは割愛するとして。
私はどうにかお弁当を作り上げ、学校へ行った。
そして食堂の端の席をキープして、園田くんと長尾くんを待ったのだった。

お弁当を前にした二人の目は、とても嬉しそうだった。


「すげえ。これ全部福原さんが作ったの?」


長尾くんの問いに頷く。


「美月ちゃんの教え方が上手だったから、どうにか作れたんだ」

「うん……。美月が毎日作ってくれてたやつに、似てる」


園田くんがまじまじと見つめて言う。


「卵が上手く巻けてなかったり、生姜焼きが焦げたりしてるけど、味は美月ちゃんの言う通りにしたから」


焼き具合だけは、勘弁して欲しい。
そう言ってから、私は二人に早速食べてもらった。


結果的に、お弁当は上手くいったらしい。

長尾くんは「すげえ美味い!」と連呼したし、園田くんは私を見て、「ありがとう」と感激した様子で言った。


「美月のメシだ。美味い。美月も、ありがとう」


園田くんの言葉に、私の横にいた美月ちゃんが、花が綻ぶように笑った。


「よかったぁ。ヒィ、ありがとう!」

「いえいえ。みんなが喜んでくれたなら満足だよ」


えへへ、と笑って、私も卵焼きを口に入れた。

……うん。
自分で作ったとは思えない位、美味しい。